ちょっと前の話だが、最近にしては珍しく映画を見た。
僕には映画リコメンダーがいて、その人が勧める映画にはハズレがない。
今回見たのは「みなさん、さようなら」(原題:Les invasions barbares) 。
あの『たそがれ清兵衛』をおさえて、2004年アカデミー賞外国語映画賞を受賞した映画。
まぁ賞をとったことは、あまり関係ないわけで、内容に見ごたえがあれば嬉しいだけ。
で、内容だが末期ガンの父親の話。
と、聴くと「ははーん、最期のシーンで家族が看取って美しく死んでいく感じか~!?」
なーんて、事前に感動を受けるスタンバイをしてしまう。
これが僕の悪い癖。で、その通りの展開だったら、僕の中では駄作。
さてこの映画、結論から言えば秀作でした。
笑いながら、涙は流さず、しかし「こんな死に際は幸せだ」と心から感動した。
見ていない人が多いと思うのでネタは書かないが、
人の人生をキレイ事で描かないところに、非常に共感を覚えたわけです。
かつて僕が「死ぬ際にかかる葬儀・お墓などの情報」をコミカルに番組化したとき
他のディレクターから反感を買ったことがある。
にも関わらず、内容を見たプロデューサーが・・・
「明るく死を考えること」「死にまつわる情報を出すこと」を否定するとは何事か?・・・と、
逆に他のディレクターを論破したのを目の前で見て、驚いたことがある。
主人公の「パパ」は豪放磊落で、どうしようもない女たらし。
そんな彼の人生をそのまま包み込んで、幸せな最期を迎えさせようと、
奥さんが提案し息子が動き、愛人や友人が集まるその姿に感動したわけ。
そんな主人公のパパの生き様は、最後の最後までまさに日本の落語の精神「業の肯定」そのもの。
死に際も好色な想像をしながら逝ってしまったら、どんなに男は幸せなことだろう・・・。
そんなことをうらやましくも思わせる映画でした。
死に際をどう迎えるか・・・、うまくいけば数十年後のこと。さて、どうしようかね。
映画のワンシーンに、9・11の同時多発テロのシーンがあった。
僕の知り合いは、WTCビルにいて、とうとう遺体すら見つからないまま。
そんな死に際を迎えた男もいるわけで。
人生いつ終わりが来るか、わかったもんじゃない。
きょうも生き延びたな。
明日はどうかな?