僕のビジネス論

解説|分母と分子 割合を使ったニュースのとらえ方

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日本一の社長輩出の都道府県は山形県なのか!?

 

民間調査大手の東京商工リサーチの「全国社長の輩出率、地元率」調査によると、社長を輩出している確率が最も高いのは、意外にも山形県であることが分かった。フツーは、東京や大阪と思うだろう。実際、東京都出身の社長の数は8万383人と全国1位。2位は北海道(4万7359人)で、大阪府(4万5279人)は3位。ちなみに山形(人口約118万人)は人数では1万5201人で24位。(ゲンダイネット – 09月12日 10:01)

 

だからどうした?
と、一読して思わないといけないと思います。こういうニュースを読むたびに。日本の場合はよく都道府県別での指標を使いこれをもって、自前の理論を展開します。しかし、元来都道府県でこのような数値を比較することに何か意味があるのでしょうか?そして、そもそも「社長」とは何でしょう?調査に用いる言葉の定義がそもそも判然としません。

分数に惑わされてはいけない

 

そして、このニュースは実数ではなく「確率」つまり、割合を扱っているのです。日本人で数字への見立てが弱い人ほど、確率の数値が上下するたびに、その割合の「分子」の増減にばかり目を奪われる傾向があるようです。

 

ニュースが私たちを騙しにくるのは「分数」「割合」「確率」を用いる時

ニュースのからくりのうち「確率」を扱う情報は、意外と「分母」の増減で動きがあるケースが多いようです。ちなみに本件のような山形県のニュースは、単に母数としてとらえている自治体内の総人口(すなわち「分母」)が他地区より相対的に少ないから、割合の数値が高まっただけだろうということを予測できます。その証拠に社長さんの実数は全国24位ですから。。

 

このニュースに関して意見するならば、例えばそれらの「社長」がかつて何らかの教育を受けており、その結果、○○規模以上の会社へ30年以内に成長させたなどという「相関」や「因果関係」を示唆してくれるような調査結果であるならまだ情報としての価値もあり、利用し甲斐もあるわけです。そこから教育をもっと厚く深くできる仕組みを探り、作ろうなどという「対策」や「方向性」を考えることができるからです。

 

しかしながら今回のようなニュースを見た瞬間に、たまたま社長には山形出身が多いと書かれていても「それが何か?」とあなたが思えたかどうか。。。そこに、あなたのニュースの読み方のセンスを問われるわけです。

 

露出されるニュース等の情報へ疑いの目を持ちながら読みこなす能力とでも言いましょうか?ちなみにこのニュースを読んで、もっとも戸惑うのは山形出身の方では?山形出身の社長さんは僕も一人知り合いにいますが、ご本人がこの記事を読んでどう思うのか?(たぶんどうも思わないとは思いますが。。)ちなみに記事に記載されている、伝統工芸が多いなどの御託はまったく「社長の多さ少なさ」と相関があるものとは思えません。

 

統計を学ぶとこのような意味のない記事を書くメディアが多いことに気づきます。この記事を読んだ方が、どうでもいい数字に惑わされないことをお祈りするのみです。

 


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